逗子での公演では皆さまのご指摘通り、少し私の今までの歌い方とは外れて、がんばりすぎの歌い方になってしまいました。「ドレスデンでの影響では?」と皆様にご心配頂きましたが、もちろん大音量のオーケストラとワーグナーを歌いこなす大歌手とのアンサンブルで、150%くらいで歌っていたのは確かですが、そのせいではなく、久しぶりに日本で歌うという張り切り過ぎの気持ちと、支えをより強固に使って120%くらいで歌うとどうだろうという試みと、自分に音が返らない音響の中で、バランスがうまくとれなかったのが原因です。
公演後、のども疲れて、体力も著しく減衰しましたので、こういう歌い方はやっぱり自分には合わないのだと、反省していたところです。ただ、ダイナミックでオペラティックな歌い方をすると喜んでくださる方がいるのも確かで、私の一生の悩みどころでもあります。
私自身はバーバラ・ボニーさんのような、聴いているだけで心が浄化されるような、涙がでるほどの透明感を持ちつつ、そこに深い音楽性がある歌い方、というのが一番目指したいものなのですが、曲によっては、憧れのドラマティックな歌い方がつい沸き上がって来て、自分の持ち分を超えた歌い方をしてしまうことがあります。宗次ホール、紀尾井ホールは歌い手にとっては、無理をせずともすべてが伝わるホールだったので、本当に助けられましたが、これからも自分の持ち分をわきまえて、皆さまのご指摘を忘れないように気をつけていきます。ありがとうございました。
それから、ご指摘頂いたモーツァルトの大ミサハ短調のEt incarnatus est(聖霊によってマリアより生まれ)は歌いこなすという意味でメイン・イヴェントともいえる大曲でしたが、山岸さんの素晴らしいフォローのおかげでほぼ思い通りに歌うことができました。これはテンポや、ホールの響きに恐ろしく左右される曲なのですが、来月は宗教曲をメインにこの曲も含めてレコーディングがあるので、また挑戦したいと思っております。
これからも、皆さまの感想やご指摘をいただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
![Maki Mori [ Official Blog ]](http://www.makimori.com/images/spacer.gif)
Comment - コメント -(4)
私が初めて森さんを聴いたのは、2003年の川口市のリリアでした。リリアの音楽ホールも良い響きをしていますね(ちょっと変わった響きですが)。 当時はまだ、森さんが今ほどはメジャーではなかったと思いますが(え、もうメジャーでした?)、日本にこんなソプラノ歌手がいたんだという感じで、自分の中ではダイヤモンドの原石を見つけたような気分でした(比喩が全然不適切ですが… あくまでも感覚的なものです、笑)。 美声もさることながら、まるで本国(イタリア人やドイツ人ということ)の歌手が歌ってるのかと思うほどイントネーションというか何と言うか、歌い方が自然なのには本当に驚きましたし、また、ディテールの正確で端正な歌いまわしにも天性のものを感じました。
私は当時、オーケストラや室内楽のコンサートをメインに聴いていたのですが、森さんを知ってからは、本来は憧れを持っていた「歌」のリサイタルも楽しむことができるようになったと思っています。 因みに、他の歌手で最近聴いた中では、シェーファーがとても良かったです。 先日のコルボ/ローザンヌのクイタンシュの「ピエ・イエズ」も大変見事でした。 森さんのキララ・ホールでの「ピエ・イエズ」も楽しみにしていますよ。
ところで、ファンの方やご自身もおっしゃるように、「透明感を持ちつつ、そこに深い音楽性がある歌い方」が森さんの持ち味だと思います。 でも、オペラ・セリアの中でも、あまりドラマテイックでないものなら、その持ち味を生かすことで今までにない「端正で美しい」オペラ・アリアという可能性を体験したいとも思っています。 もちろん、これはリサイタルだから可能なことですが。 また、現状でも森さんの歌は、すでにその端緒を表しているとも思っています。 オペラ・ブッファあるいはドラマティックなものについては、お客さんが喜ぶように「弾けちゃって」いいんじゃないでしょうか(笑)。 プログラムの最後の方にすれば声にも支障ないでしょうし、たまにはストレス解消しないと(笑)。
レコーディングの件とても楽しみにしています。 もちろん「ピエ・イエズ」も入りますよね(絶対)。 それから、もしCDに余白が出たらでよいのですが(笑)、カッチーニ Cacciniの「アマリリ Amarilli」も是非よろしくお願いします。 4分弱の曲なので(余白、余白……)、リサイタルのアンコールにも打ってつけだと思います。 もちろん、森さんにぴったりの(世界で一番お似合いの)美曲であることは私が保証します(笑)。
by 太郎 | 2007年6月 5日 19:23
日時: 2007年6月 5日 19:23
こんばんは。僭越ですが一言申し上げます。Divaがファンの意見に耳を傾けられるのはファンにとっては嬉しいことでしょう。しかしアーティストは大衆の望むものを与えるのが本来のあり方とは思えません。ある時は期待を裏切り、ある時は批判を受けても、自らが欲するところに従うべきときがあると思います。一度試して評判が悪く自らも失敗だったと思ったとしても、また挑戦したくなられたら、おやりになれば宜しいと思います。千人のファンがいれば千人の違った「森麻季」が存在するのです。同時に全てを満足させることは難しいでしょう。その時その場でDivaの思うがままに歌われていいのでは?意外な一曲が百年後に生きる青年の人生を変えてしまうかも知れませんよ・・マーラー交響曲第4番の独唱そのままに天真爛漫がDivaにお似合いです。ちなみに個人的には、ミサ曲、オラトリオ、交響曲に出演して頂きたいのですが・・かくの如くファンとは自分勝手なもので・・・ご自愛を祈ります。
by Oratorian | 2007年6月 5日 22:24
日時: 2007年6月 5日 22:24
わしと申します。
「来月は宗教曲をメインに…レコーディングがある」!耳寄りなお知らせとは、まさにこのこと。またまた生きる張り合いがひとつ出来ました。
名古屋の愛知芸術文化センター1階には、アートライブラリがあり、声楽のCDも充実しています。麻季さんを知って以来、休日には、同ライブラリに陣取って、ソプラノ中心に片っ端から聞きまくっているのですが、ナタリー・デッセイやスミ・ジョー、日本の方では鮫島有美子さんのものなど何枚もあるのに、麻季さんの出されたCDがいまだ2枚というのは、何としても物足らぬ思いです。
クラシックの声楽家にとって、CDをリリースするということは、なかなか大変なことなんです。麻季さんご自身がどこかでそう語っておられました。でも、ファンというものは欲張りなもの。特に、地方のファンにとっては、リサイタルで麻季さんに接する機会もまれで、CDで麻季さんの魅力を味わうほかありません。麻季さんの素敵な歌声をもっともっと多く聴きたい、新作CDのリリースを願うのは自然なことです。小生も、もちろんそのひとり。2作目を昨秋に出されたばかりで、次作までのインタバルが普通どれくらいなのかは、素人につき存じませんが、宗教曲を中心とした3作目、一日も早いリリースを心待ちにしています。
でも、麻季さんのお人柄からして、自分自身で十分に納得の出来るものでなければ、気安く出すなんてことはしないんだろうなあ。そうした姿勢はとても大事なことだと思います。だから、あまり急かせるのも申し訳ないし…。フグは食いたし命は惜しし、歌は聴きたし急かすは悪し。
それはさておき、こんな太平楽を並べているあいだも、アージュちゃんは病に苦しんでいるわけで、ご心痛お察し申し上げます。早く回復することを願うばかりです。
by わし | 2007年6月 5日 23:49
日時: 2007年6月 5日 23:49
声楽の素人の拙いコメントに応えていただき,恐縮の極みです。ますます麻季さんのお人柄に惚れ込みました!
モーツァルトの「聖霊によってマリアより生まれ」,本当に素晴らしかったです。以前,ゲバントハウスバッハオーケストラとの共演の際も歌っておられましたよね。その時もとても感動したのですが,ピアノ伴奏のみの今回の演奏の方が曲の美しさがきわだっていました。あれだけ難しい曲をあそこまできれいに歌える歌手は,世界中で麻季さんだけだと思います。
来月の宗教曲のレコーディング曲にも入っているとのことで,とても楽しみです!
by ヒロリン | 2007年6月 6日 01:57
日時: 2007年6月 6日 01:57