Concert Reviews
声楽 ドレスデン聖十字架合唱団
世界最古の歴史をもつドレスデン聖十字架合唱団が、ドレスデン・フィルと来日、バッハの教会カンタータ『我が心には憂い大かりき』と、モーツァルトの『レクイエム』などを演奏した。指揮は当初予定されていたペーター・シュライアーが来日不能となり、代わりに合唱団のカントール(合唱長)を努めるローデリヒ・クライレが指揮をとった。
カンタータは45分程の大作で、古風なスタイルの中にも情熱的なアリアが美しく、管弦楽は壮麗で合唱も清涼感に溢れた。カントール就任10年を経たクライレの指示、全体像の把握もさすが立派だった。
だがその静的な演奏がガラリと変わったのは『レクイエム』(レヴァイン版)で、典礼的な形式観に変わって人間的な感情が激しく表出される。<怒りの日>の鮮烈な混乱、<涙の日>の深く引きずり込まれるドラマ性も感動的だった。もしシュライアーだったらどんな演奏になったのだろうか。
独唱は森麻季(S)、シュヴァルツ(A)、ペッツェルト(T)、クプファー(B)で、モリは唱法の違いもあってかドイツ勢とは少々色合いが異なったが、その透明感に溢れる歌唱には特筆すべき美しさがあった。2月27日・サントリーホール
結城 亨